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発達障害で障害年金を受給するためのポイント

発達障害とは、平成17年4月施行の発達障害者支援法により「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義付けされています。
同法の施行以来、発達障害に対する世間一般の認知度が高まっており、障害年金の申請件数も近年増加傾向にあると言われています。しかし、単に発達障害だからと言って、それだけで障害年金が受給できる訳ではありません。
初診日要件、保険料納付要件、障害認定日要件という三つの要件をクリアーして初めて受給権が得られるものです。
ここでは、発達障害で障害年金を受給するためのポイントや注意点を解説します。

目次
1、初診日の特定
2、障害の程度
3、診断書の作成依頼
4、病歴・就労状況等申立書の作成ノウハウ

1、初診日の特定

障害年金を申請するためには、まず、初診日を特定し医師の証明を受ける必要があります。
手続きを進めていく上での第一関門と言えます。
初診日が特定できなければ、申請する障害年金の種類も決まらず、また、保険料納付要件もクリアーすることができないため、原則として障害年金を受給することはできません。
障害認定基準においても、「原則として、本人の申立等及び記憶に基づく受診証明のみでは判断せず、必ず、その裏付けの資料を収集する」と記載されています。
一般の方と障害年金専門の社会保険労務士では、初診日の捉え方に大きな差が出ます。
それほど初診日は重要なのです。
一般の方が申請して不支給となった理由で圧倒的に多いのが、この初診日に関する証拠書類不足です。不支給となってから、審査請求や再審査請求の段階で相談に来られる方も非常に多く、最初からお任せいただければ、すんなりと受給できたのにと思われるケースもかなりの数にのぼります。
初診日の立証については、最も社会保険労務士の知識や経験が問われる場面です。
特に病歴の長い方の場合、初診日時点のカルテが廃棄されていて医証が入手できないケースも多いと思います。そのようなケースでは「初診日とは」のページに記載したような客観的な資料をできる限り多く集めることで受給確率を上げることができます。

発達障害は先天性の疾患ですが、初診日は、知的障害のように自動的に出生日となる訳ではなく、あくまでも初めて医師の診察を受けた日です。通常は幼少期に何らかの異常に気付いて受診することが多いと思いますが、思春期あるい青年期以降に初めて受診するケースもしばしば見受けられます。

では、発達障害と他の精神疾患を併発している場合の初診日はどのようになるのでしょうか。
基本的な考え方は次のようになります。
①うつ病や統合失調症と診断された後に発達障害が判明した場合
→同一疾患とし、うつ病や統合失調症の初診日が発達障害の初診日になる。
②知的障害(3級程度)と診断された後に発達障害の症状がが顕著になった場合
→同一疾患とし、知的障害の初診日(出生日)が発達障害の初診日となる。従って、請求方法としては事後重症請求とならざるを得ない。
③知的障害(3級不該当程度)と診断された後に発達障害の症状がが顕著になった場合
→別疾患とし、発達障害単独での初診日となる。
④発達障害と診断された後にうつ病を発症した場合
→同一疾患とし、発達障害の初診日がうつ病の初診日となる。
⑤発達障害と診断された後に統合失調症を発症した場合
→原則として別疾患とし、それぞれの初診日は異なる。ただし、発現している統合失調症の様態が発達障害の症状の一つと考えられる場合は同一疾患とする。
 

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2、障害の程度

日本年金機構の審査では、実際に発達障害によって日常生活や就労がどの程度制限を受けているかが重要視されます。具体的には、「障害認定基準」や平成28年9月1日施行の「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」に沿って総合的に判定され、支給・不支給が決まります。
障害認定基準に例示された各等級の障害状態は次のようになります。
 

等級障害状態
1級社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時の援助を必要とするもの。
(介助なしでは日常生活がまったく成り立たない状態)
2級社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの。
日常生活が極めて困難で、活動の範囲が概ね家屋内に限られる状態)
3級

社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの。
(短時間労働や障害者雇用であれば、かろうじてこなせる状態)


具体的には、以下のようなケースで2級以上に認定されやすいと言えます。
 ☑ 障害者施設に入所中、もしくは、最近まで入退所を繰り返していた。
 ☑ 無職、もしくは、長期休職中。
 ☑ 就労する意欲がわかない。
 ☑ 家事がほとんどできない。
 ☑ 通院以外に外出できない。
 ☑ 希死念慮が強い。
 ☑ 自殺未遂や自傷行為を繰り返している。
 ☑ 他人とのコミュニケーションが取れない。 
 ☑ 入浴は週に1~2度のシャワーのみ。
 ☑ 金銭管理ができない。
 ☑ 精神障害者手帳2級以上を持っている

逆に、次のような場合は不支給となる確率が高くなります。
 ☑ 毎日、就労している。
 ☑ 曲がりなりにも一人暮らしができている。
 ☑ 何とか家事がこなせる。
 ☑ 他人とのコミュニケーション能力には問題ない。
 ☑ 入浴は毎日、湯船に浸かっている。
 ☑ 主治医が障害年金の申請に非協力的。

また、発達障害と他の精神疾患が併存しているときは、それぞれの疾患を個別に審査して併合されるのではなく、諸々の症状を総合的に判断して等級が決められることになります。この「総合的」というのがクセモノで、併合認定のような明確な基準がなく、主観的な要素が入り込みやすくなくなります。これまでの事例からも明らかに不合理な裁定が数多く見られます。逆を返せば、審査する側にとっては、どのような結論を出しても言い逃れのできる、非常に便利な基準と言えます。

3、診断書の作成依頼

障害年金の審査は書類審査のみであり、日本年金機構の障害年金センターで一括処理されています。
審査官や認定医と一度も面談することなく、提出した書類ですべてが決まってしまいます。
その際、最も重視されるのが診断書です。
診断書の内容に妥協は許されません。
医師は月に1~2回程度の診察時の状態しか知りませんから、日頃の症状や日常生活状況をできる限り詳細に伝えて、実態に即した内容にしてもらうことが重要です。
そのためには、診断書を依頼する際に、次のような症状や日常生活状況について具体的にまとめておき、自己申告書として手渡すことも効果的です。

抑うつ気分、無為・無関心、思考力・集中力・意欲の低下、反復・常同行動、不適応行動、不注意行動、衝動行為、強いこだわり、自閉、多動・多弁、感覚過敏、自責感、焦燥感、希死念慮、自傷行為、睡眠障害、食欲不振、倦怠感、家族関係、対人関係、コミュニケーション能力、洗面、入浴、着替え、金銭管理、買い物、通院・服薬状況 etc.

そして、できあがった診断書には隅から隅まで目を通してチェックしましょう。
診断書の一項目、一行でも軽く記載されると、もうそれだけで不支給となる場合もあります。

 ✔ 住所・氏名・生年月日に間違いはないか。
 ✔ 初診日は正確に記載されているか。
 ✔ 発病から現在までの病歴・経過などに誤りはないか。
 ✔ 教育歴・職歴・通院歴はきちんと記載されているか。
 ✔ 現症日の記載洩れはないか。
 ✔ 記載された症状は実態と合致しているか。
 ✔ 日常生活能力の判定・程度は適切か。
 ✔ 就労状況は正確に記載されているか。
 ✔ 予後の記載は妥当か。
 ✔ 訂正箇所がある場合、必ず訂正印が押されていること。 etc.

特に、診断書裏面の「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」における評価が重要で、受給できるかどうかの明暗を分けます。
医師の作成した診断書だから誤りはないと思い込むのは禁物です。
これまでの経験上、ほとんどのケースで記載洩れやミスがありますので、そのときは遠慮なく訂正依頼を行いましょう。

4、病歴・就労状況等申立書の作成ノウハウ

診断書の次に重要なのが病歴・就労状況等申立書です。
病歴・就労状況等申立書とは、通常、発病時から現在までの経過や日常生活状況を請求者自身が自己申告するものです。しかし、発達障害の場合は先天性の疾患とされていますので、「発病時から」ではなく「出生時から」の記載が求められます。
通院歴、通院頻度、入院期間、医師の指示、転医・受診中止の理由、施設への入所期間、就労状況、対人関係、日常生活状況などを詳細に記載しなければなりません。
抽象的な表現や難解な用語はできるだけ避けて、実際にあったエピソード等を交えながら具体的に記載するのがコツです。
未就労期間や休職期間があれば必ず記載しましょう。
よく「お金に困っている」ことを切々と訴えるケースも見受けられますが、そのこと自体に、ほとんど意味はありません。障害年金は一定の障害状態に対して支給されるものであり、お金がないからもらえるというものではないからです。審査に関係のないことをだらだらと書くことは、読む側にとって苦痛でありマイナスイメージにもつながりかねません。働けない場合は、その具体的な理由を記載すべきです。
病歴・就労状況等申立書のちょっとした表現の違いで不支給となってしまうこともありますので、診断書との整合性にも注意しながら、慎重に仕上げていく必要があります。
障害認定日まで遡って請求する場合は、病歴・就労状況等申立書の重要性が増します。
具体的には以下のような点に注意しながら作成しましょう。

 ✔ 周囲の人とのコミュニケーションは取れていたか。
 ✔ 不登校、不適応行動、不注意行動、常同行動、強いこだわりなどはなかったか。
 ✔ 学校で孤立していたり、いじめを受けたりしていなかったか。
 ✔ 家族、友人、職場の人とのトラブルはなかったか。
 ✔ 就労していた場合は、仕事の内容、勤務日数・時間、欠勤、休職、遅刻の回数 etc.
 ✔ 職場で周囲からサポートを受けていなかったか。
 ✔ 障害者雇用ではなかったか。
 ✔ 掃除・洗濯・ゴミ出しなどの家事や公的な手続きはこなせていたか。
 ✔ 一人暮らしの場合、家族と同居できない理由や日常的な支援の状況。
 ✔ 自宅はゴミ屋敷となっていないか。
 ✔ 具体的な症状をすべて記載しているか。
 ✔ 一人で規則的な通院や服薬ができていたか。
 ✔ 受診していなかった期間がある時は、その理由。
 ✔ 希死念慮や自傷行為はなかったか。
 ✔ 配膳や皿洗いなどを含めて、一人で適切な食事が取れていたか。
 ✔ 着替え、歯磨き、洗面、洗髪、入浴等の衛生状況。
 ✔ 買い物や金銭管理は、きちんとできていたか。
 ✔ 引きこもりとなっていた場合は、その理由。

特に、受診していなかった期間については、その理由を記載していないと、審査では「症状が改善していたため」と受け取られがちになります。経済的理由や病識の欠如による場合は、その旨を明記しましょう。通院できないほど症状が悪化していた場合は、その具体的な状況を記載しましょう。
また、食事については、家族の用意してくれたものを単に食べるだけでは、一人で適切な食事が摂れていたとは言えません。毎回、コンビニやスーパーのおにぎり、カップ麺などを買ってくるだけの場合も同様です。
引きこもりとなっていた場合は、単に、その事実を記述するだけではなく、理由(コミュニケーション能力不足など)もきちんと記載しましょう。
 

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